健康というもの(1)
私も結婚をしてから体重が増えたことをきっかけに食生活のことを考えたり、体力の衰えを感じたことをきっかけに定期的な運動を心がけています。そこで調べ、試したみたことを友達などに話をしてみると、皆さんとても興味深く聞いてくれました。考えてみれば、今は空前の健康ブーム。情報があふれるほどあるがゆえに、何を信じればよいのかわかりずらくもあります。なるべく地に足のついた話をしていきたいと思います。
最初に私が目指したいこと。それは、仕事あるいは子供がいらして、病気になるわけにはいかない人たちの健康が維持されること。仕事と子育てが終わった人は、生き甲斐を持って楽しい生活を送れること。そしてころりと亡くなること。ただ長生きすればいいと言うわけではない、と思っています。
もうひとつ、健康に特効薬はないということ。たしかに購入すれば成功するダイエット食品はあります。しかし、その商品を使い続けなければ効果は持続しません。こうしてリピーターとなることにより、会社が利益を上げるという構造になっています。現在のところ、これを飲んでいれば・食べていれば、あるいは注射や点滴をすれば大丈夫というものは無さそうです。
聖路加国際病院の名誉院長・日野原先生が命名したとおり「生活習慣病」といえます。生活習慣をただすことが、やはり正しい道です。そんな生活習慣を一つ一つ書いていきたいと思います。
「食事」
一言に食事と言っても、とても奥が深いものです。いくつかテーマに分けて書いていきたいと思います。
「炭水化物」
アメリカにおいて高騰する医療費を削減するために「どんな食事をすれば病気にならないか」大規模な研究が行われました。その内容を要約すると「低カロリー、低脂肪食、精製しない穀物・野菜・果物を多くとること」となるそうです。
低カロリーとするにはどうしたらよいでしょう? 多くの方にこの質問をすると「食事の量を減らす」と返ってきます。しかし、これは正しくはありません。少ない食事量に不満がたまり、またもとの食生活に戻ってしまったり、何とか減らせた方は栄養素が足りなくなることもあります。糖尿病で入院された方は栄養士により栄養指導が行われ、それぞれの食事のカロリー数をざっと計算できるようになるための訓練を受けます。これを誰でもできればよいのですが、現実的にはなかなか難しいものです。
男性で太っている方の多くは、炭水化物がとても好きな人が多いように感じます。炭水化物とは簡単に言えば「お米・麺・パン」です。炭水化物は「主食」と言われるように、食事の主なものであり、また人間が生きていくために必要なカロリーを摂取するものです。これが過剰になっているようです。
糖尿病食は、その他の副食はほとんど変えず、おもにこの主食を減らすことでカロリーをコントロールしています。しかし、人気テレビ番組「元祖!デブや」では石塚さんとパパイヤ鈴木さんが、どんな食事にも山盛りのどんぶりを片手に美味しそうに食べていますが、この方達に「ご飯を減らして」というのは酷かも知れません。私自身も「白米大好き」です。どうすれば減らすことができるか、自分なりに試してみました。
意識をしてみました。今日はこれだけ残してみよう。今日は半分にしてみよう、と。これはこれである程度成功しましたが、めだった効果がありません。
ご飯をあとに食べるようにしました。もちろん他の副食と一緒に食べたくなるのですが、なるべく少しずつにしました。
ゆっくりとよく噛むようにしました。これはまた後ほど述べます。
玄米などを混ぜるようにしました。やや固めになりますので量も減りますし、栄養素も高くなります。味はそれほど変わりません。
こうして今はかなり主食を減らしています。また主食を減らすとやはりお腹がすくので、苦手なものも残さず食べるようになりました。体重も順調に減ってきています。大切なのは、自分なりに合う方法で行うこと、極端になりすぎないこと、と思っています。私も時には白米もたくさんとりますし、ラーメンも食べに行きます。ただ日々の毎日の食事はゆっくりと変化してきました。そして、それが身体にも馴染んできました。こうなると負担はほとんどありません。身体も軽くなり、入らなくなっていたズボンも入るようになってきました。お試し下さい。
「脂肪」
脂肪については誤解が多いようです。まず血液検査で出る総コレステロール値ですが、220mg/dl以下が正常と記載されています。しかし、最近の研究ではむしろもう少し高め220~260mg/dlあたりがもっとも元気で健康な状態であることが解ってきました。欧米の人と違いは、日本人のほとんどの方はこの間にあてはまりますので、コレステロールが諸悪の根源のようないい方をすべきなのか、という気がします。コレステロールは身体から作られるものも多く、必ずしも食物からと言うわけではありません。高コレステロールの代表と言われる卵も、実は1個食べる程度では2~3mg/dl上がるだけと言われています。むしろ魚などに含まれている油は、動脈硬化にも効果が認められていますし、必須脂肪酸という生きていく上で必要な脂肪というものもあるのです。ここのあたりは鎌田實先生の「ちょい太でだいじょうぶ」に解りやすく書かれていています。ぜひご一読下さい。
健康というもの(2)
「野菜」
野菜をとることの重要性は以前にも増して言われています。繊維質が便通を良くし、大腸癌の発症を抑えたり、カロリーが少ないことだけではありません。万病のもと「動脈硬化」は活性酸素が体内でできることで生じることが解ってきました。この活性酸素を減らしてくれるのが緑黄色野菜なのです。野菜については悪いことを書く方が難しいぐらいですが、難点が一つ。嫌いな人が多いことでしょう。特に子供に顕著です。かくいう私も野菜嫌いでした。どうすれば野菜をなるべく多く摂取できるようになるのでしょう。
最初に摂取する。お腹がすい時は一番好きなものから食べがちですが、なるべく野菜類からとるようにして下さい。お腹のすい時に食べること、なるべく味わうことで、野菜の持つ本来の美味しさが解ります。
主食の代わりに食べる。私はご飯を減らしているので、野菜をご飯代わりにして副食とともにとっています。解りやすく言えば、トンカツについている千切りキャベツです。こうするとかなり食べやすいです。
形を変える。生野菜はとてもいいのですが、なかなかたくさんはとれないものです。煮たり、焼いたり、あるいはジュースにしたりと、摂取しやすい形態をいろいろと考えるのは大切なことです。毎日野菜ジュースを飲むとアルツハイマー病になりにくい、という研究結果も発表されています。
野菜本来の味を理解してもらう。私も幼い頃、畑に行って取れたての野菜をかじった経験があります。野菜が美味しいことに初めて気づきました。野菜を食べない子供には、ぜひその味を知ってほしいですし、食卓にも届けたいものです。
「肉」
これも誤解が多いと感じている食材の一つです。年齢を経るにつれて人はお肉をとらなくなります。しかし、人に必要な蛋白質の量は、年齢による変化がありません。年齢を経るほど、実は積極的に肉をとらなくてはいけません。
ダイエットをした方は気づいたと思いますが、人は痩せるときは筋肉から減り、太るときは脂肪から増えます。また、普段の生活を維持するだけでは、筋肉はゆっくりと落ちていきます。だんだんと重く感じる身体を、本当は年齢のせいにしてはいけないのです。蛋白質をとり、筋肉を維持・増量させるのはとても大切なことです。
ご高齢の方でとても活動的な方は「肉好き」であることを、皆さんも何となく感じられていると思います。これは肉の中に含まれている成分が、人間が幸せを感じるときにでるホルモンの原料をたくさん含んでいるからだと言われています。
沖縄の長寿の秘結に「豚肉」があることも有名ですし、脂肪分の少ない「鶏肉」は筋肉疲労をふせぎ、肌のつやも良くしてくれる成分も多いと言われています。あまりサシが多い肉を避けていただければいいのではないかと思います。
「アルコール」
それほど目新しいことはありません。1~2杯程度の飲酒はむしろ身体によいと言われ、百薬の長とまで言われています。ワインは、前述の活性酸素を減らす飲み物のひとつです。
アルコール量が増えると肝酵素が上昇し、飲酒量を減らすよう指導をしますが、アルコールが原因で肝硬変になるためには、日本酒二升あるいはボトル一本を毎日摂取しなくてはいけません。なかなかここまで飲む人はいません。むしろ、アルコールばかりで他の食事をとらなかったり、あるいは味の濃いもの、カロリーの高いものばかりをつまみとしてしまうことに問題があるのかも知れません。
アルコールはストレス解消の要素が少なくありません。むしろ、そのストレスをどうしていくかの方が、飲み過ぎの方には大切なのだと思います。
「糖分」
男性の太る原因が炭水化物だとすると、女性は糖分でしょうか。(炭水化物も分解されれば糖分なので、同じものではあります。)チョコやケーキ、甘いものが嫌いな女性にはなかなかお目にかかれません。この糖分を控えることの困難さは、並大抵ではないと思います。女性はストレスを感じた時の大切な解消方法のひとつが糖分の摂取であるからです。他の手っ取り早いストレス解消方法がない場合、なくてはならない存在なのです。あえて糖分はあまり減らさないとするとどうすればいいでしょう?
先ほど話したように、炭水化物を減らすというのもひとつの手です。あと、糖分をとるのであればできるだけ運動や勉強の前後、あるいはおやつの時間にします。これは、頭は糖分しか利用できないためですし、筋肉はたんぱく質を利用するのに糖分が必要なためです。吸収の遅いたんぱく質は、おやつの時間に摂取された糖分でようやく一緒に利用されます。とくに成長期の子供には、おやつが欠かせないのはこのためでもあります。大切なのは、運動をしっかりすること、だらだら食いをしないこと、虫歯とならないようにしっかりと歯磨きをすることです。
「塩分」
脳梗塞や脳出血をおこすと、身体が麻痺してしまい、生活がとても不自由になってしまいます。その原因の一つに塩分のとりすぎがあります。もともと日本は塩を用いて貯蔵をする文化であり、「塩梅」と言うぐらい塩分にうま味を感じる民族です。知らず塩分をとりすぎている傾向にあります。一日の摂取量を10g以下にすると良いと言われています。
塩分の多い食べ物に、漬け物、醤油、お味噌、ラーメンなどが言われています。たしかにこれらの塩分の含有量はやや高めなのですが、特に醤油やお味噌に含まれているたくさんの良い成分はとても大切です。濃い単一の味つけに舌を慣れさせず、素材の味がしっかりわかる味つけを大切にしてください。濃い味に慣れてしまうと、舌は年齢とともに鈍感になり、より強い塩分を求めるようになります。
健康というもの(3)
「良く噛むこと」
良く噛むと、腹八分目で十分な満腹感が得られます。これだけでも食べ過ぎを予防できてしまいます。また良く噛むと唾液が出て、食べ物が何とも言えない甘みとなり食事が美味しくなります。噛むことで顎のラインが引き締まりますし、認知症予防にもつながるとも言われています。噛めば噛むほど、良いことばかりです。
あまり噛まない、早食い、一口が多い人ほど肥満の傾向が強いという研究結果が出ています。私も仕事柄そうなりがちなのですが、気をつけてみると意外によく噛むことはできるものだと感じています。食事時ぐらいゆったりした気持ちで、かみしめながら食べたいものです。
「時間帯」
よく言われることですが、遅い時間に食べてはいけない。これは本当のことです。遅い時間になるほど、食べたものは利用させずに蓄積されていきます。これは最近、科学的にも立証されました。
これと逆に朝ご飯の重要性も確かです。朝は少しでも睡眠時間をとりたいと、朝食を抜きがちです。いま若い子供の遅寝・遅起き・朝ご飯抜きの生活が問題になっています。尾道の士堂小学校で教師をされている「陰山英男」先生は、百マス計算で一躍有名となりました。その先生が百マス計算より先に「早寝・早起き・朝ご飯」の習慣をつけることが大切と、子供達とその親御さんに伝えています。
統計上もこの三つが、脳の発育に大きな影響を与えることが解ってきています。これは何も子供限ったことではなく、また子供は親のまねをすることから考えても、大切な教訓を含んでいると考えています。朝をもう少し早起きし、少し散歩してから食べる朝食の味を、ぜひ覚えて欲しいと思っております。
ただ、どうしても夕食が遅くなる、あるいは仕事柄会食が多い方は、本当に軽めの朝食でも良いようです。昼を減らしてバランスをとっている方もいます。前述の日野原先生も、鎌田先生もそうされているようです。
「旬、土地のもの」
すこし前であれば有機農法、最近はスローフード、ロハス、マクロバイオティクスといった言葉を良く聞きます。基本は同じで、「旬のもの、土地のものを、自然な形で育て、手を加えすぎずにいただく」。
信州で完全有機農法、全て自家栽培の野菜を提供する宿泊施設のオーナー臼井健二氏がこんなコメントをしていました。「夏にとれる野菜は身体を冷やしてくれる作用があります。冬はその逆ですね。旬にはちゃんとその役割があるようです。アトピーや喘息も、そういったバランスの崩れからおこるような気がしています」 旬、土地のもの、料理方法など、食事の文化とも言えるものには、ちゃんとその意味があるようです。
辰巳浜子さんの「料理歳時記」という本があります。日本の持つ本来の食文化を伝える数少ない本となってしまいました。いま若い世代にこそ、必要なものではないでしょうか。
健康というもの(4)
「煙草」
煙草を吸われている方は「別にこれで死んだっていいんだ」と言われますが、タバコはむしろ不自由だが死ねない病気が多いようです。若くして脳梗塞になられた方は、ほぼ必ず喫煙されています。病気はなってみないと、その怖さ不便さは本当に解りません。しかし病気になったときには、もう元の身体には戻れません。
たとえ食事に気をつけていても、運動をしていても、薬を飲んでいても、タバコを吸っていたら全く意味がないぐらいの害があります。しかし、喫煙を続けている方はタバコの害を言われ慣れているためか、「タバコをやめよう」という気持ちにならないようです。
「人は強くない」は私の持論です。たしかに依存性のある物質を、意思一つでやめられるほど人は強いとは思っていません。それ故に、やめた人を会うとそれだけで尊敬をしてしまいます。一人一人にやめた秘結を聞きますが、病気であったり、誰かの一言であったりしますが、それほど大仰ではない印象があります。やめてみようと思って止めてみた、最初はつらかったけど、やってみれば何だこんなことかという感じのようです。
別の院内誌に書きましたが、今はいくつか補助をする方法がありますので、ぜひ一度ご相談下さい。
「運動」
いま最も大切なのは運動だと感じています。本来食事は減らすものではなく、しっかりととるべきものです。運動をしっかりしていれば、体重は増えていきません。しかし、なかなかできないのも現実です。
医師をしていて気づいたことがあります。日常の生活をしていれば同じ筋肉量は維持できると思っていましたが、どうも違うようです。よく年齢のせいと言われていますが、人は鍛えれば80歳でも90歳でも筋肉量を増やすことができます。80代の方がフルマラソンをかなり速いペースで駆け抜けた姿を見たとき、私はショックを受けたのと同時に人の可能性を知りました。
どんな運動がよいか。全ての基本は足の筋力です。足は最も多い筋肉量を誇り、たくさんのカロリーを消費します。腹筋をしてお腹の脂肪を減らそうと考えるより、足の筋肉で消費をした方が効率的です。また、年齢を経て腰や膝を痛めたとき、やはり筋肉の量が関係します。筋肉が知らず落ちてくると、関節の負担が大きくなり変形が進み、痛みを生じてきます。足の筋肉はとても大切なのです。
内容ですが、やはり年齢的・体力的に応じる必要があると思います。若い方であれば、マラソンやスポーツジムが必要でしょう。
野球やバレーなどのスポーツは、十分な柔軟と筋力トレーニングをしないままにするのは危険を伴います。あるべき身体能力を超えやすく、事故につながります。楽しめること、継続がしやすいのは良い点だと思います。
50代、60代の方も、歩くだけでは十分な負荷とは言えないでしょう。速歩やもも上げを間に入れてあげる必要があります。膝や腰の悪い方は、やはりプールがお勧めです。
歩くという動作はもちろんよい要素をたくさん持っていますが、ゆっくりとしたペース、足を上げない動作はあまり筋肉に対する負担はなく、かわりに関節面に負担をかけるため注意が必要です。たとえば、10cm程度の段差を上がったり下がったりを繰り返したり、あるいは座ったまま、足を上げた状態で静止する動作を繰り返す方がよいと思います。
汗をかいたり、息が切れたり、足に疲労感を感じる程度。また続けていくには、爽快感や実際に身体が楽になる感触が必要です。苦しいだけでは続きません。
人とのつながりも大切です。スポーツジムであればスタッフと。歩くのであれば友達や夫婦など。イヌの散歩という手も良いと思います。一人だけではなかなか続けるのは難しいのです。
運動をする時間がとれないことも大きな問題です。私も時間がとれず、ながら運動をよくしています。テレビを見るときは軽く膝をまげてたったまま見たり、座っている時は足を上げていたりしています。朝あるいは夜にスクワットをするのであれば、10分もあればできます。ただこれも、目標がないと継続はなかなか難しいです。
健康というもの(5)
「意欲」
健康であることは大切なのですが、ひとつは病気を持ちながら生きていく世の中になっています。むしろ、いくつになっても幸せに楽しく生きることが大事だと思います。
身体は健康でも、ストレスで落ち込んでいたり、元気がなかったり。ご老人で大きな病気もないのに、楽しみが無くて「早くお迎えが来て欲しい」と呟いたり。その一方で、瀬戸内寂聴さんやプロスキーヤーの三浦雄一郎さんのように、いつまでたっても現役で、まだまだ楽しいことやるべきことがいっぱいある、と考えている方もいらっしゃいます。どうすればそれほどの意欲が持続できるのか。
その根本は子供頃にあった、あの「わくわく」と「集中力」ではないでしょうか。「やらされる」ことや「用意された」ことに慣れて、すっかりと忘れてしまった感覚を取り戻したいものです。
例えば、とことんやってみる。仕事であれ、趣味であれ、嫌なことであれ、楽しいことであれ、とことんやっていくとそこに面白みが出てくる。成長が楽しみになる。いつまでも追求する先があることが、自分を突き動かしてくれる。
同時に、いい加減であること。行き詰まったときに、空がきれいであることに意識を向けられたり、ぼーっとすることの時間がもてたり、バカな話をしたりすることを純粋に楽しめること。
また他の人に役に立つのであればなおさら良い。突き詰めたことが人の役に立つのであれば、自分が止めたいと思っても人が求めてくる。求められれば嫌だ嫌だと言いながら、悪い気持ちはしない。そうして継続される。
人の役に立たなくとも、自分が幸せであることが他の人を笑顔にすることでも良いと思います。少なくとも、自然体でつきあえる人との交わりはいつまでも大切にすべきでしょう。
「ストレス」
仕事上でひどく緊張した状態が続いたり、プライベートでも気が抜けない、自分らしく生きることができないなど、私たちの周りはストレスがいっぱいあります。今のままではいけない、変化をしなくてはいけない、というのは「ありのままでは受け入れてもらえない」という強烈なメッセージとなることがあります。
ここには一般的な解決方法はないと思っています。あげるとすれば「考えること」。つらい場所からどうすれば脱却できるのか考え続け、「失敗してもいいからやってみる勇気を持つこと」。いくつかの失敗の後に、「次の世界が広がることを信じること」。
その合間に、「ありのままの自分を見てくれる存在」があり、「気を抜いた自然体でいられる時間」を持ち、「自然を見てきれいと思い、音楽を聴いて楽しいと思い、身体を動かして清々しい気持ちを知る」ことが大切ではないかと思っています。
健全な精神は、健全な身体に宿る。逆もまた然り。心の疲れは、身体を使って治し、身体の疲れは寝て治し、寝た疲れは頭を使って治す。バランスが大切です。
「勉強」
音読をすること、書くこと、計算をすることが認知症に効果があることが認められてきています。小学校でも「百マス計算」などの単純な計算の繰り返しの大切さがあらためて見直されています。
簡単なレベルのものでかまわないので、とにかく毎日繰り返すこと。そしてしだいに慣れてきて早くなる。この同じことを繰り返して、早くなるというところに要点があります。
脳は同じ電気信号が通ることにより、シナプスのつながりが強固になります。脳細胞がゆっくりと死滅していったとしても、そのシナプスのつながりはいくつになっても増やしていくことができます。
単純な作業をバカにせず、すぐに新しいものに飛びつかず、これはもう完璧だというほど繰り返したものを積み重ねていく。これはスポーツであれ、全てのことにつながる基本を含んでいると思います。
「ドック」
一年に一回は身体の検査を受けてみることをお勧めします。一つは癌の早期発見のため、もう一つは生活習慣病の早期発見のためでしょうか。たとえ検査上では異常が見あたらなかったとしても、運動が少ないのではないか、体重が多いのではないか、ストレスが多いのではないか、と身体や心に気を使うきっかけになるのではないでしょうか。
日常の中でのお勧めの体調管理はなんと言っても体重計でしょうか。入浴する前に裸でひと乗り。数字を見ているだけでも、日常生活を気にする一助になります。また特に毎日が変わっていないのに体重が減ってきた場合は、何らかの病気にかかっている可能性があります。
「睡眠」
自分にあった睡眠時間はそれぞれに違いますが、一般的には6~8時間の睡眠、早寝・早起き、15~30分程度の昼寝がもっとも頭を活動的にし、集中力を高めます。眠っても眠たいのも、全然眠れないのも、またひとつの病気です。早起きが苦手な方は、朝の光が入るようにする、少し前に静かな音楽を流すように設定する、日曜日も同じ時間に起きる、無理に起きてシャワーを浴びてしまう、などはいかがでしょうか。
人は多様で、それぞれにあった方法があると感じています。また身体の健康と同時に、心の健康も大切です。そして最後に、どんなに苦しい状況でも人生に対して「Yes」といい、どこかに「楽しむ」心と「愛する」気持ちを忘れないで欲しいと思っています。