骨粗鬆症


 我々は三十歳を過ぎた頃から徐々に骨が弱くなっていき、五十歳を過ぎたあたりから骨折の危険性が増えてきます。特に高齢者になると、わずかな転倒がそのまま骨折、入院にいたることが少なくありません。一度骨折をきたすと、治療後も生活に不自由を生じたり、歩くことが怖くなってしまいます。いつ頃から検査や治療を受ければ、こうした骨折を予防できるのでしょうか。

「若いときにすべきこと」

 若い間にどれだけ骨をしっかり作っておくかが大事です。まずカルシウムの摂取。牛乳やチーズなどの乳製品、大豆などの豆類、海草などの海産物、緑黄色野菜などはどれもカルシウムを多く含んだ製品です。特に牛乳はコップ一杯でカルシウム220mgの摂取が可能で、推奨されている一日800mgの四分の一がこれで確保できます。小魚などは腸からの吸収が悪いのでは、と言われていますが、このあたりのことははっきりとした研究はないようです。サプリメントでも効果があるところをみると、どんな形態でも大きな影響ないようです。
 二つめに運動です。骨は負担がかかるほど強くなろうとします。週三回程度の三十分以上の運動をしっかりしている子供の方が、骨は強くなっていきます。
 三つ目が陽にあたること。夏場であれば、木陰で三十分程度。冬場であれば手や顔に一時間程度の日光を浴びることが大切です。これは、骨を作る際に必要なビタミンDに日光が必要なためです。
 この三つは何も若いときだけに必要なことではなく、その後もずっと必要なことです。いくつになっても「カルシウム、運動、太陽」を大切にしてください。

「危険因子」

 喫煙をする人はしない人に比べて、骨折の危険性が1.5倍になります。またお酒も日本酒にして二合以上毎日飲まれる方は、そうでない方と比べて1.5倍程度危険性が高くなります。また血縁の方で骨折をされたことがある方や、ステロイドという薬を飲まれている方も注意が必要です。閉経をされた女性は、そのホルモンの影響のために骨はどんどんと弱くなってしまいます。

「検査」

 レントゲンなどを用いて、骨塩を計測するのが一般的です。痛みもなく、時間もそれほどかからない検査ですので、五十歳を過ぎられた方は検査を受けられることをお勧めいたします。YAMという検査値が出てきますので、70%以下の方あるいは80%以下で前記のような危険因子のある方は、治療を受けられることをお勧めいたします。またこの結果は絶対ではないので、たとえばすでに骨折をされたご年配の方などは、結果によらず治療を受けられた方がよいと思います。

「治療」

 以前と比べて、今は飲み薬で良いものが出てきました。ビスフォスフォネートと呼ばれるものがそれです。(商品名はフォサマック、ボナロン、アクトネル、ベネットなど) 効果がしっかりしていますし、一日一回の内服で大丈夫です。ただし、起きてすぐに水分とともに飲み、三十分程度立っているか座っている必要があります。胃の調子が悪くなる方も少なくありません。そんな方には週に一回ですむタイプも出てきましたが、新製品のため今はまだ2週間分しか処方ができません。
 女性にはラロキシフェン(商品名エビスタ)という、ほぼ同等の効果をしめす薬剤も出てきました。これも一日一回ですみ、朝食後の内服でかまいませんし、胃部不快の副作用も少ない。ただし、あまり動かない方には深部静脈血栓という、足に血のかたまりができやすい副作用が報告されていて、寝たきりの方にはお勧めできません。
 効果は一段落ちてしまいますが、カルシウム製剤、ビタミンD、ビタミンK製剤にも効果が認められています。ただまだ飲みあわせの効果が解っていないため、処方の有無は医師の判断に任されています。
 カルシトニン製剤(商品名エルシトニン、カルシトラン)という注射もありますが、これは骨を強くすると言うよりは、骨から来る痛みを改善する効果があります。

 癌、脳血管疾患、そして骨。三代疾患と言っていいと思います。骨の丈夫に保つ大切さをこれからも伝え続けていきたいと思っています。