上手な病院との関わり方

上手な病院との関わり方

 病院にかかる垣根が低くなっているにもかかわらず、我々は未だに病気の時はどこにかかればよいのか、迷ってしまいます。私からみた上手なかかり方について、いくつ書いてみたいと思います。

小さなお子さんの場合

 産まれてから幼少時期は、風邪を含め体調を崩すことが少なくありません。かかりつけの小児科を決めておくことは、とても大切です。この時、大きな病院ではなくクリニックにされた方がよいと思います。これは、大病院は重症なお子さんを診ることに人材を振り分けるべきで、軽症なうちはできるだけ遠慮していただきたいという病院側の事情があります。またそれだけではなく、クリニックでは夕方診療があったり、予約ができたり、予防接種などの対応もしてくれるなど、大病院にはないサービスが少なくありません。同じ医師に継続的に診てもらえることは、変化に気づいてもらえる、こちらの事情を理解してくれるなどのメリットもあります。
 子供さんの救急はひとつの問題です。クリニックでは夜間帯に診てくれない、という理由で大病院をかかりつけにしようと考えている人も少なくはないと思います。意識がはっきりしていて、水分などが取れる状態であれば、クリニックが開くのを待って受診されればよいと思います。緊急を要する場合は、救急車を呼んで対応してくれる病院を探してもらうか、救急医療情報センター(タウンページに記載されています。インターネットでも調べられます)にご連絡下さい。小児科対応をしてくれる施設を教えてもらうことができます。

成人になってから

 目立って病気のない方であれば、健康診断あるいはドックを定期的に受けられるだけでよいと思います。そこで何らかの異常を認めた場合、あるいは何らかの症状が出た場合に、こちらもやはりクリニックを受診される方がよいと思います。自宅や勤務先から近いこと、開いている時間など、自分のライフスタイルにあったクリニックを探してください。これもタウンページやインターネットなどで簡単に調べることはできると思います。
注意点として、周囲の評判に振り回されない方がよいと私は思っています。有名な医師にかかりたい気持ちは解りますが、本当にその医師を必要とされる患者さんのためにひかえていただければと思いますし、また多くの場合、専門以外は診ることが出来ない、混み合っていて待ち時間が長いわりに診察時間が短い、などデメリットも少なくありません。人間的に信頼のできる、親身になって相談にのってくれる、自分だけの「かかりつけ医」を探してください。
 救急はまた難しい問題を抱えています。大病院の救急の多くはパンクしており、2~3時間待ちも当たり前のようです。歩いて受診して3時間待ちといわれ、早く診てもらいたいからと一度家に帰って救急車を呼んだという人もいると聞きますが、異常な状態と言わざるをえません。とはいえ大病院以外は、救急という重圧と過労からしだいに手を引くところが少なくありません。ただ当院のように中~小規模病院で救急を頑張っているところ、あるいは夜遅くまで開いているクリニック、医師会が持ち回りでやっている休日診療所などもあります。前述の救急医療情報センターでそうした情報を聞くことができますので、なるべくそうした施設を利用していただき、そこでより高次病院の医療が必要と判断された方は紹介されて大病院を受診する、という形をとっていただきたいと思っています。

 また、救急の時によく言われるのが、「○○の専門医はいますか?」という問い合わせです。現実的には当直医のほとんどは内科か外科の医師です。例えば眼科や整形外科などは、大病院でも当直はしていないことがほとんどです。内科医や外科医がまず診察をし、緊急で必要と判断された場合、待機の専門医が呼ばれて自宅からかけつける、という具合です。多くは初期対処をし、翌日の専門医の診察をお勧めします。ですから、夜間帯などは専門医の診察を期待されず、また同時に診てもらえたからと安心せずに、翌日にはかかりつけ医あるいは専門医などを必ず受診してください。また救急時間帯は、激務と眠気あるいは十分な検査ができないことから、救急での診療は絶対に適切な対処をしているとは言い難いのが現実です。整形外科の専門医でも骨折を見逃し、内科の専門医でも腹痛の判断を誤ることがあります。夜間帯は1~2日分しか薬を処方しないのはそう言った理由があるのです。この点はご理解下さい。

ご高齢の場合

 病気が複数あるのが当たり前となると、いくつもの病院を掛け持ちすることが少なくありません。かかりつけだとすぐに入院させてくれるのではないかと、大病院にかかり続けている方もいらっしゃいますが、そうとも言えません。かかりつけはクリニックにされ、複数かかるのではなく、なるべくまとめてみてもらうようにお願いをしてみて下さい。またふくれ上がった薬を減らせないか、整理してもらうこと、ジェネリックなどの安い薬に変えてもらうなども、ご気軽にご相談下さい。
 足腰が不自由になってきたときは、往診をお願いしてみてください。往診は昔のことでも田舎だけのことでもなく、多くのクリニックで今でもちゃんと行われています。ただ、夜間帯や祝休日までは対応してくださるところは少なく、自宅でなるべく過ごしたい方は、緊急時にも対応してくれる往診専門の医師も開業しておりますので、そう言った施設をご利用下さい。
 入院が必要な場合、中小病院をまずご利用される方がよいと思います。大病院では重症患者さんのための病床を確保するために、軽中等症の方は外来加療をすすめられます。とはいえ、その中にも入院をされた方が良さそうな方もいらっしゃいますし、ご本人・ご家族としても困ってしまうこともあると思います。また、よくある病気はむしろ中小病院の方が、スムーズに対応してくれるところも少なくありません。大病院の入院は、そうした中小病院で診断され、必要と判断されて紹介入院という経路の方を用いていただくことで、本当に必要な人が必要な医療を受けられる体制を、一緒に作り上げていきたいと思っています。

 医療施設の数は増え、皆保険も維持され、高額になった場合には払い戻しもあり、保険が無くとも当日に健康保険は発行され、収入がない場合は医療券が発行されて無料で受けることが出来など、日本のアクセスの簡便さは世界的にもトップレベルにあると思います。ただ、施設が適材適所にあり、利用者がうまくそれを利用しているかと言われれば、そうではないのが現実です。またマスコミで言われているように、地域医療あるいは小児・産婦人科の医療崩壊は、対策は打ち出されていますが現実的には歯止めがかかっているとは言い難い状況です。
 医療者と患者さんが互いに考えて、助け合い、よりよい適切な医療を受けられるよう、ご協力よろしくお願いいたましす。