胸郭出口症候群

胸郭出口症候群

 ここ最近、20〜30代の手のしびれを訴える患者さんが数名来院されました。ご本人は脳からの病気を心配されていることが多いのですが、この年齢で、手指のしびれが脳から来ることはほとんどありません。頸椎ヘルニアなどの首から来る場合、あるいは手根管症候群などの腕のどこかで神経が圧迫される病気の方が多いでしょうか。しかし、検査の結果、どちらの問題もなく病名がはっきりとつかない場合も少なくありません。しびれはもともと診断が大変難しく、学生の時に呼んだ神経内科の本に「半数は原因がわからない」と書かれていたことを思い出します。
 とはいえ、私の無知があってはいけません。しびれについてもう少し調べてみると、「胸郭出口症候群」という病気がありました。聞いたことはあるのですが、どうも理解が不十分だったようです。読み返してみると、症状が当てはまる部分が多い。私の勉強も含め、しびれで心配されている方のためにも、解りやすくここに書いてみることにしました。

■症状

 女性であれば20〜30代、なで肩で事務仕事などの多い方。男性であれば中高年でむしろ筋肉質で怒り肩、首の短い方で、 作業やスポーツなどで、上肢や首をよく動かす方に多いようです。上肢のしびれや痛みだけではなく、肩や首・肩甲骨などのこりやだるさを訴えることがあります。また冷えや発汗、時として気持ち悪さや動悸などを訴えることがあるようです。

■原因

 上肢へ伸びる神経は首から鎖骨のあたりを通って腕へ向かいます。この鎖骨あたりで筋肉や骨で神経が押されるために症状が生じます。女性の場合は長時間パソコンを使うなど手を下ろしていることで、この神経の通り道が狭くなり症状が出ます。男性の場合は筋肉が発達し、よく手や首を動かすスポーツや仕事のために神経が圧迫されます。

■診断

 画像として診断をつけると言うよりは、こうした症状があること、そして以下のようなテストを用いて診断をします。
・頭をしびれる側に回して息を深く吸い込み、止めたところで脈が弱くなったり無くなったりする場合。
・肩を90度まであげて手を後ろの方向へ倒し、脈が弱くなったり無くなったりする場合。
・同じ体勢で、指の曲げ伸ばしを3分続けられない場合。
・鎖骨の上のくぼみを押して、しびれや痛みの広がりを見る。
 こうした所見を合わせて、「胸郭出口症候群」と診断をつけます。

■治療

 実は決定的な治療があるわけではありません。原因となりそうな動作を避け、十分に筋肉のストレッチや軽い運動をすること、になります。神経の通りが狭くなっているところを切る手術などもありますが、 症状はずっと続くものでもないようなので、そこまで行うのか、難しいところです。
 筋肉を柔らかくする薬や、安定剤や痛み止めなどの薬を飲む方法。局所に麻酔薬を打つブロックなどの薬物治療もあります。
 マッサージや電気などのリハビリ加療も一定の効果はあると思います。

 症状が広くややあいまいで、診断が画像的に難しいことから、ゴミ箱的診断(よく解らないけれど、この名前をつけておこう)ということに陥りやすいのですが、病名がつかずに不安になるよりは、症状が当てはまる場合は、こうした可能性も考えていきましょう。

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