ドックについて

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■ ドックについて

 健康診断あるいはドックはもちろん、体調の不安を感じていない人に定期的な検査をすることで、健康管理・予防・早期治療へのきっかけに行われるものです。ではどんな内容のものを、どの間隔で受けていけばよいのでしょう。

ドックとは

  いくつかのドックや健康診断を調べてみると、不思議に感じることがありました。ひとつは本当に必要な検査が基本検査項目の中に入っておらず、別料金でのオプション検査になっていること。例えば胸の検査は胸部レントゲンが行われているところがほとんどです。しかし、全肺癌の6割しかレントゲンでは見つけられない、と言われています。本当に大切な胸部CT検査は、別オプションになってしまっています。
 もうひとつは、いらない検査があること。 糖尿病と言えば尿に糖が混じるもの、と想像しがちですが、それはかなり病気が進行してからでないと出てこないものです。その反対に糖尿病でなくとも尿に糖が出ることがあります。今となってはそれほど意味のない検査になってきているのですが、糖尿病検査としてどのドックでも、また簡易な健康診断にも入っています。
 日本は幸い国民皆保険で、とても検査を受けやすい体制になっています。そのためか、必要のない検査も吟味されることなく、セットのようにくっついてきます。また本当に必要な検査は高価であったり、苦痛を伴うために後回しにされる傾向があります。本当に必要なものは何か、必要でないものは何か、を考えてみたいと思います。

PET検査

 いま流行のPET検査(一度に全身の癌を調べることができます。胃・腎臓・膀胱などは苦手で、万能ではありません)は、1回十万円前後と大変高価です。費用が会社で持てるのであれば毎年行うことをおすすめします。しかし、他のもう少し安価な検査を集めれば、それにも負けない組合せができます。

身長と体重

 身長、体重、腹囲はいまや家庭でも計測できる ものですが、肥満の状態を知るもっとも簡便にして確かな方法です。特に体重は、日々の体調を示しますし、ダイエットを目指す方であれば毎日の測定は欠かせません。Body Mass Index(BMI = 体重kg÷身長m÷身長m、22が理想と言われている)から理想体重を求めるのが一般的ですが、やや数値が高いぐらいは健康の面ではまったく問題ありませんし、1~2kg減らすだけでも血糖やコレステロール値、あるいは腰や膝に与える影響はかなりあります。目標はゆるく、ゆっくりとです。生活が何も変わっていないのに体重が減ってきている場合は注意が必要です。何の症状もなく体重が減るだけの癌も少なくはないのです。体重は簡便にして大切な健康の指標です。

血圧

 血圧も簡便にして大切な値です。収縮期血圧が140mmHg以下、拡張期血圧90mmHgが正常とされています。検査の時は緊張して上がることがありますが、これも高血圧の一つです。動脈硬化の予防になりますので高かった方は嫌がらずに医師の受診をお勧めいたします。

血糖

  血糖は、空腹な時の値が126mg/dl以上であれば糖尿病の疑いとなりますが、今はむしろHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー、といいます)という値を大事にしています。これはおおよそ一ヶ月の血糖値の平均を表してくれます。大雑把に言えば、この値が4~5で正常、6で境界型の糖尿病、7では治療を要する、8以上は危険となります。

コレステロール

 コレステロールはいくつかの値があります。総コレステロールは善玉も悪玉も中性脂肪もあわせた全ての値で、正常値は220mg/dlとなっていますが、心筋梗塞があったり糖尿病があるわけでなければ、260mg/dl程度までは良いとも言われています。 HDLは善玉をさしていて60以上が望ましく、LDLは悪玉であり100以下が望ましいとされています。中性脂肪は前日の食事内容にかなり左右されますので、お酒やカロリーを控えめにして、取り直してみると正常値と言うことが少なくありません。

肝臓

 肝臓は身体の悪いものを分解したり、栄養を 調節したりする、「代謝」と呼ばれる機能の要です。AST、ALTが主なものですが、だいたい40以上で異常、100以上であればよく調べたり入院をする必要があります。多くは脂肪肝ですが、B型やC型の肝炎ウィルスによる慢性的な肝炎を示している場合もあり、異常の場合は一度検査の必要があるでしょう。 T-bilはビリルビンという、肝臓で本来分解されるはずの物質で、これが高いということは肝臓の機能が落ちていることを示します。「黄疸」といわれる、身体や目が黄色くなるのがこのビリルビンです。γ-GTPは、よくアルコールで上昇する値です。ただたくさん飲んでいるのに上がらない方もいらっしゃいますし、飲んでいなくても高い方もいらっしゃり、毎年やや高めなのに問題の方もいらっしゃいます。

腎臓

 腎臓は、尿を作り出す大切な臓器です。 BUNとCrという二つの値でみます。この二つは本来、腎臓で濾過されて尿から排泄されるもので、正常値を超えている場合は腎臓の機能が落ちていることを 示します。尿検査もよく一般的に行われていますが、糖分が出ていても糖尿病と診断することはできませんし、女性では血が混じることもよくあることです。血液検査やCT検査を行うのであれば、それほど必要性はないと考えております。

膵臓

 膵臓は難しい臓器です。もっとも心配な膵癌は進行が早く、また検査でも見つけづらい場所にあるため発見が用意ではありません。ここはまだ医学の進歩が及ばない場所の一つです。アミラーゼという血液検査を行いますが、あくまで参考値と考えた方がよいでしょう。

  脳。脳ドックというものがありますが、残念ながらCTやMRIで事前に脳梗塞や脳出血を予測することはできません。予兆もなく発症し、発症して数時間たってからしか検査では異常を示さないからです。アルツハイマー病も、早期に画像で検査するためにはPETといったかなり高価な検査が必要です。脳のためには、むしろ禁煙・血圧・コレステロール・血糖などをしっかりとコントロールし、ぼけが心配になってきたならば頭や身体をしっかり使っていくことの方が大事です。
 突然死というものがあります。その多くは心臓か頭のためと言われています。頭では「クモ膜下出血」と呼ばれているものがほとんどです。これは、脳の血管に動脈瘤という破裂しやすいふくれた部分ができることが原因です。検査としてはMRIをもちいた血管撮影が身体に害も与えずよいとは思いますが、時間とお金がかかる割に検査で異常が出る人が少ないため、突然死の家系のある方や希望者に絞ればいいと思います。毎年行う必要もないと思います。

 白内障は年齢とともに必ず訪れます。点眼薬はありますが、それほど予防効果があるわけではなく、根本的にはかなり悪くなってからの手術しかありませんので、検診の意味はあまりありません。ただ緑内障は症状がないままに進行することがあり、失明の原因となってしまうことがあります。眼底写真や眼圧検査が必要となります。当院でも行えますが、やはり眼科のあるところでの検査をお勧めいたします。

 80歳までに20本の自分の歯を残そう、という8020運動というものがあります。歯科医へ定期的に検査を受け、歯の磨き方のチェックを受け、歯石除去の受けることをお勧めいたします。

 健診やドックでも胸部レントゲンがほとんどです。そこで異常を認めたとき初めてCTとなりますが、残念ながらレントゲンではかなりの部分の病気を見逃してしまいます。肺でもっとも大切なのは、いま死亡原因1位の肺がんの発見です。症状がないままに進行していることが多く、定期的なCT検査が大切ですが、それより前にやはり禁煙がもっとも大切です。ただ、タバコを吸われない方でも肺がんはありますのでご注意下さい。また喫煙されている方は、しだいに肺が壊れていく肺気腫という病気もあります。これもCTで壊れている様子をみることができます。禁煙のきっかけになれば、と感じています。

心臓

 不整脈や心筋梗塞です。これは実は検査で事前に知ることがとても難しい病気です。健診やドックでは心電図をとりますが、実はこれではほとんど病気をつかまえることはできません。携帯できる心電図を一日中つけている検査(ホルター検査)、ベルトコンベアー上で走って計測する心電図(負荷心電図)ですら、十分とは言い切れません。もっとも確かなのは血管に管を入れて行う造影検査ですが、これを全員に行うわけにはいきません。タバコや生活習慣病をしっかりと正すことを第一として、動悸や胸痛があったら検査をするのが現在ではベストと思われます。そのため海外では日本以上に心筋梗塞が多いにもかかわらず、健診やドックでは心電図検査は行われていないという話です。

 ドックではバリウムが主ですが、実はバリウムで早期癌を見つけるのはとても難しいのです。昔は進行胃癌がほとんどでしたからバリウムでも良かったのですが、早期の癌であれば内視鏡で完治できる現在、やっぱり検査は胃カメラがもっとも良いと思います。毎年ひっかかって、結局胃カメラをされる方も少なくないのではないでしょうか。この検査には苦痛が伴うため、ほとんどのドックではオプション対応か、我慢をして受けていただいている状況だと思います。当院ドックでは痛み止めと眠る薬を用いて、ぼぉっとしている間に検査をしてしまうことにしました。数時間ぐらい薬の作用が残ってしまうので帰りは車の運転ができませんが、これならば誰でも、毎年でも受けられると思います。

大腸

 大腸癌はやはりカメラが一番ですが、便の中に血が混じるかどうかの検査でもまずまず代用できます。それが陽性であれば検査でよいと思います。大腸癌はゆっくりすすむ癌ですし、進行していても比較的完治がのぞめます。

乳房

 女性であれば、乳癌検診が大切です。「見て・触る」検診が多いのですが、やはりマンモグラフィーという検査が良いと思います。残念ながら当院ではマンモグラフィーは無いので、他にお願いすることになります。

  心の健康もまた大切です。これはいくつかの質問票によって診断する方法が発表されていますが、よく言われている「快眠・快食・快便」を確認することと「楽しいこと・楽しみにしていることがありますか?」といった質問だけでもだいぶ解ります。項目にひとつでもNoがあれば、よろしければゆっくりと話し合ってみましょう。

 女性で問題になる骨粗鬆症は年齢を重ねた方が多いので、30~40代の方には必要がないと思いますが、閉経された50代以上の方は進行が進みやすく、のちのちの骨折予防につながりますのでお勧めしたいと思います。

腫瘍マーカー

 良く行われている腫瘍マーカーは残念ながら早期診断にはほとんど役に立ちません。唯一PSAが前立腺癌には比較的有効ですが、これも若い方には少ないですし、死には至りにくい癌ですので希望によりでいいと思います。

健康診断

  会社や地域では毎年、健康診断を受けることになっています。自営や主婦の方でも35歳以上の名古屋市在住の方であれば、毎年1回は基本健診が千円で受けられます。(それぞれの医療機関にお問い合わせ下さい) 内容は主に高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満といった生活習慣病の早期発見のためで、癌を含めた他の病気を見つけるのは難しいと思います。
 毎年ではありませんが、癌検診も補助があります。年齢などの区分が難しく、詳しくは保健所までお問い合わせ下さい。
 また国民健康保険の方は国保ドックという、抽選でドックを受ける権利を得る方法もありますし、入られている生命保険や働かれている会社では、健診やドックに対しての補助がある場合がありますので、ぜひ確かめてください。
 どの検査もおおよそ、1年ごとが良いと思います。もっと進行の早い癌もありますが、そこまでカバーをするのは難しいでしょう。症状が出れば、早い時期に医師に相談をしてください。

情報

  ドックや健診でむしろ大切なのは、説明や相談の時間なのかも知れません。五十を過ぎると話の内容は病気や健康のことばかり、と言われています。私もよく質問を受けます。情報過多の中、何が正しいのか、自分には何が必要なのか。そういった時間を十分にとって話をすることが大切だと思います。

 健康であるときは、病気について考えないものです。しかし、責任のある身でひとたび病気になったとき、その影響は大変大きなものです。また早期に予防しておければ、大きなことにならない病気も非常に沢山あります。大切な人たちの健康を支えていくこと。自らの足と頭で、健康を維持すること。少しでもお役に立てていきたいと思っております。

 院長 三輪 高也