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腹圧性尿失禁

 中高年の女性でおしっこの近い方(頻尿)、あるいはわずかな尿漏れ(失禁)を経験された方は意外に多いのではないでしょうか。症状が軽いために放っておかれたり、「恥ずかしい」「忙しい」といった理由でなかなか受診されていなかったり、「もう年だから‥‥」と年齢のせいにしたり。頻尿も失禁も、ぜひ一度知識を持って向かいあってみられることをお勧めします。

 出産を通して膣のあたりの組織がゆるんだり、閉経のため女性ホルモンが減って膀胱の組織が弱くなったり、あるいは年齢による変化などによって、尿が出るのを我慢する筋肉がちょっとした圧力に対応しきれないことがあります。笑ったり、くしゃみをしたり、歩いたりするだけでもお腹に力が入ります。その力が膀胱に加わると、今までは我慢できていた出口から尿がちょろちょろと漏れだしてしまう‥‥これを腹圧性尿失禁といいます。
 「また漏れてしまうのではないか‥‥」と外出することが恐くなったり、失禁しないように頻回にトイレに行くようになったり、と生活に与える影響は小さくはありません。ほとんどは症状から診断はつきますが、程度を知るための検査に「パッドテスト」というものがあります。

これは15分以内に500mlの水を飲んでいただき、その後60分間ほど歩いたり咳をしたりして、パッドに何mlもれたかにより判定する国際的な規格があります。
 治療は内服治療、筋訓練、手術の3種類です。飲み薬としては塩酸クレブテロール(商品名スピロペント)、あるいは女性ホルモンを内服していただくホルモン療法があります。薬を飲むだけですので、軽症の方でしたらまず試してみてはいかがでしょうか。
筋訓練としては、骨盤底筋といわれるおしっこの出口をしめる筋肉を鍛える方法をとります。要領は「おならをとめる」「尿を途中で止める」「腟に指を入れてそれを押す」ようにして力を入れます。10秒力をいれて10秒休む。これを一日30-80回、8週間以上続けます。根気のいる作業ですが、これだけで改善する方々もいらっしゃいますので一度お試し下さい。
 薬も訓練も残念ながらなかなか効果を示さない方々もたくさんいらっしゃいます。そんな方には手術療法を受けられることをお勧めいたします。最近では日帰りですむ手術方法もあるようですので、施設や医師、手術方法などをしっかりとたずねながら決めることが大切だと思われます。
 いずれにせよ、皆さんが考えられているより良く見かける病気です。恥ずかしがらず、面倒がらず、まずは一度ご相談下さい。

溢流性尿失禁

 おしっこが近い方のなかに「溢流性尿失禁」という病気の方がいらっしゃいます。「溢れて流れる」という言葉のように尿がしっかりと出きらないために膀胱にたまってしまい、溢れるようにして出てくる状態をいいます。

 男性で言えば、前立腺肥大がよい例です。前立腺は膀胱のすぐ先にあって、年齢とともに大きくなっていきます。大きくなると尿が出ていく通路(尿道といいます)が押しつぶされ、通りが悪くなります。通りが悪くなるとなかなか尿が出始めるまでに時間がかかってしまったり、出ても勢いが弱かったり、トイレが近かったり、しっかり出た感じがなかったり(残尿感)します。前立腺肥大であれば、薬を飲む治療と内視鏡を使って前立腺を削る治療があります。

 前立腺肥大ではなかったり、あるいは前立腺のない女性の場合は糖尿病や薬の副作用の可能性を考えなくてはいけません。薬の一覧を書いておきます。あてはまるものがある時は、医師または薬剤師にご相談下さい。

 診断としては超音波を用います。排尿をする前とした後の膀胱の大きさと男性であれば前立腺を調べます。排尿した後でも50cc以上の残尿があればこの病気を疑います。
 治療について、薬のせいであれば飲むことをやめれば改善されます。膀胱まで管を入れてしまえば、たまった尿を出すことは出来ますが、その前に一度、泌尿器専門医へ紹介が必要となります。

切迫性尿失禁

 
 「おしっこがしたいな」と思ってからすぐにトイレへ向かうのに、間に合わずに失禁をしてしまった‥‥。そんな経験をされてショックを感じられた方、あるいは頻回にトイレに行きたがるようになり、介護をされている方の負担が大きくなっている場合はありませんでしょうか。いったい体の中では、何がおきているのでしょうか。

 膀胱はある程度の量の尿がたまると、それが頭に信号として情報が送られ「尿意」を感じます。ところがその回路が乱れてくると、たまってもいないのに尿意を感じ、そのまま失禁してしまう‥‥これを「切迫性尿失禁」といい、すぐに尿意を感じて収縮する膀胱を「過活動性膀胱」といいます。年齢のせい、とあきらめる前にいくつかの治療があるので、ぜひ試されてみてください。
 薬は「抗コリン剤」と呼ばれるもの(市販名「ポラキス」や「バップフォー」)があります。先ほどの「過活動」状態が改善され尿意の感覚がゆっくりと遠くなっていきます。すぐには効果がみられないこともありますので、焦らずに飲み続けてください。また口が渇いたり、緑内障を悪化させたり、尿が出ないなどの副作用もありますので飲み始めにはご注意下さい。
 しょっちゅうトイレに連れて行かれる方の場合、時間を決めてトイレへ誘導することにより回数を減らすことが出来ることがあります。

 介護者が時間を決めて訪室します。失禁の有無をたずねた後に、実際に失禁をしていないか調べます。失禁をしていない場合はほめてあげてほしいのですが、もし失禁していたとしても注意をしてはいけません。注意は失禁に対する不安をかき立ててしまうため、より頻回な尿意への循環を作ってしまうからです。その後、トイレに行きたいかを聞いてもらいますが、その意志にかかわらずトイレへ行き、排尿をしてもらって下さい。意思表示があり排尿があった時は誉めてあげて下さい。ベッドに帰り部屋を出る前に次の訪室時間を告げて、漏らさないよう励まして下さい。これを繰り返します。子供の排尿習慣をつける方法と似ていますが、相手はおそらく目上の方と思われます。決してご本人の自尊心を傷つけないよう心がけていきたいものです。
ご高齢となってからの頻尿は、尿意に対する不安であったり、我慢ができないと思いこんでいるところに問題がある時があります。上記の方法で不安をゆっくりと解消することにより、夜間も良眠されるようになったりします。逆に「なぜ漏れる前に教えてくれないの!」とお互いに不安やストレスをためないようにしていきたいものです。
 医療関係者であれば、一度インターネットで「高齢者尿失禁ガイドライン」と検索をかけて下さい。まとめられた資料が出てきますので、ご一読をお勧めいたします

間質性膀胱炎

 
  中高年女性において、尿の回数が多くなり下腹部の痛みを訴えた場合、そのほとんどは「膀胱炎」です。読まれた方の中にも、経験者はきっと多いと思います。しかし、頻繁に同じような症状を繰り返したり、抗生剤を飲んでもなかなか治らない方は「間質性膀胱炎」という病気かも知れません。

 「間質性膀胱炎」はいまだにはっきりと解明されていない病気のため、専門家でもなかなか診断がつかない場合があると聞いています。日本ではどの程度の患者さんがいらっしゃるかも解りませんが、苦しみが強く長い病気です。私も患者さんとして見かけたことはありませんが、一緒に少し勉強してみましょう。

 間質性膀胱炎は、中高年女性に主に生じる病気です。尿が膀胱にたまってくると、痛みを生じてすぐにトイレに行きたくなるため、トイレの回数が多くなります。ひどい方の場合、膀胱に尿が数十ml程度たまるだけでも痛みを生じ、日に60回もトイレへ行かなくてはならない場合があるそうです。痛む部位はやはり下腹部や膀胱周囲ですが、もっとそのまわりにも痛みが放散することもあります。

 原因が不明のため、何度も抗生剤治療を受けていたり、精神的なものとして対処されていたり、いくつもの病院を渡り歩いている方も少なくありません。診断のためには泌尿器専門医を受診し、麻酔のもとで内視鏡を用いて膀胱の内部の様子を観察したり、その一部を削って顕微鏡検査を行うことにより診断します。
 治療については、まだ根本的な解決に至っていません。麻酔をして膀胱内に水を入れて膀胱を拡張させる方法が、診断と治療をかねて行われることが多いようです。これでかなり症状は改善されます。他にも内服療法や、膀胱内へ薬剤を注入する方法などが行われることがあります。
 また食事の影響がいわれています。わさびや唐辛子などの刺激の強いもの、柑橘系などの酸っぱいもの、コーヒーなどのカフェインの多い飲み物、アルコールは痛みを強くすることがあるようです。まったく無くすこともないのですが、痛みと相談して原因となるものをとりすぎないように注意をしていきましょう。

 「おしっこが近い」という思いは、男性であれ女性であれよく抱える問題です。同時になかなか話を持ちかけにくい事柄でもあります。「年のせいだから‥‥」とあきらめる前に、気軽に一度ご相談下さい。