寝汗


 寝汗が続く患者さんに原因を問われたのですが、答えることができませんでした。寝汗もまたよくある症状ですが、一般の方も含め医療者もあまり知らないところです。医療書を読んでもほとんど記載がありません。インターネットで検索をしてみると、五味クリニックという「わきが・体臭・多汗」を専門とした医師が分かりやすく解説しているホームページがありましたので、それを中心として記載したいと思います。

生理的発汗

 汗はもともと体温を調節するために出てきます。人は眠るとき、やや体温を低くして「プチ冬眠」のような状態を作り出すと、良好な睡眠を得られます。そのため、ほとんどの方は寝汗をかいています。体が熱くてよく眠れない、あるいは寝汗が強い方は、日中に体が汗ばむぐらいの運動を定期的におこなって、全身からの発汗をよい状態にたもち、寝具を通気性の良い、熱と汗を適度に逃がしてくれるものにかえるとよい場合があります。

精神性発汗

 その一方で夢見が悪く、不安から汗が出ている場合もあります。日中でも緊張から過度の汗が出たり、うつや不安障害から汗が出て困ることもあります。特に手足や腋(わき)などの汗が出やすい場所に集中することがあります。手掌多汗症という病名もあります。
 この場合、手術により腋や手の汗を抑える方法があり、汗が少なくなることで精神的な症状も改善することがあります。

しかし手術を考慮する前に、書籍やインターネットなどを用いて汗と心の関係とその対策について十分に調べ、自律訓練法や精神療法など心の治療も検討してみるべきでしょう。心が根本原因の場合、手術をしても改善されなかったり、再発したり、別の症状となってあらわれることがあるからです。

盗汗

 サラサラとした運動後にかくような寝汗と違い、粘っこい汗が頭部や首から胸のまわり、腰から股の周囲に多く出る場合、特別に「盗汗」と呼ぶ場合があります。
 昔から盗汗は、結核などの消耗性疾患(体がゆっくりと消耗していく病気、感染症や癌など)の症状としてよく言われています。咳嗽がある場合は胸のレントゲンが必要になります。他にも甲状腺機能亢進症(バセドウ病)という病気でも夜間の発汗がおもな症状の時があります。
 漢方の世界では精神的・肉体的に弱っている虚弱な人を「陰虚」という状態で説明し、不眠・口渇・精神不安を伴い盗汗をくり返す特徴があるといわれています。こういった方には漢方薬の処方が効果を示すことがあります。

更年期の発汗

 更年期の時は、普段よりも発汗が強く見られます。ホルモンのために生じるのですが、いくつか自分で出来る対処方法があります。
汗は抑えるよりも、むしろ出してあげた方が予防になります。運動による発汗、入浴による発汗は昼間や睡眠時の発汗をおさえてくれます。また納豆や枝豆などの豆類は、女性ホルモンと似たような構造をしているため、症状が改善することがありますのでおすすめです。