肺炎球菌ワクチン


 冬になると当院でもインフルエンザの予防注射を行っております。発症を確実にとめるわけではありませんが、高熱が短期間でやわらいだり、肺炎となって入院にならずにすむなどの効果があるため、毎年多くの方が接種を希望されます。

 実は、肺炎を予防するワクチンもあります。肺炎球菌と呼ばれる肺炎の原因菌の一つを、ワクチンを用いて免疫を獲得します。絶対に肺炎にならないわけではないのですが、やはり症状を和らげたり、発症を予防したりする効果があります。
 ワクチンを接種すると、2週間ほどで免疫ができ、約5年間その効果が期待できます。接種する季節も問わず、インフルエンザなどを摂取した後でも6日以上あければ接種できます。

 そんな便利な薬が、なぜ今までそれほど注目を浴びずに来たのでしょう。たしかにこのワクチンを接種すれば肺炎球菌の8割に対して抵抗力を持ちます。しかし、実際に肺炎を予防したか、入院をせずにすんだか、論文を調べてみるとその効果は賛否両論なのです。ある論文ではとても効果があると発表しているのですが、一方では効果は望めないとされています。また、インフルエンザにはある補助金も肺炎球菌ワクチンにはなく、7~8千円程度の費用がかかります。


 それでも、このワクチンを勧めるには理由があります。ひとつはやはり高齢者の肺炎は入院あるいは死亡の原因となっている怖い病気であること。入院の費用を考えても、8千円は高い金額ではないでしょう。また接種後、少し腫れたり熱を持つことはありますが、めだった副作用もありません。そしてもう一つ、肺炎球菌の肺炎に対してたくさんの抗生剤を用いられてきたために、抗生剤に反応しない肺炎球菌が出現してきました。こんな恐ろしい菌が増えていったら大変です。抗生剤を使わずワクチンで予防できれば、そうした心配もしなくてすみます。
多くの感染症が、幼少時のワクチン接種により大流行せずにすんでいます。予防接種はときにその副作用が問題になることはありますが、とても大切な予防治療の一つです。

 ただ日本は残念ながら、予防接種の効果が切れる5年後の再接種を認めておりません。2回目のワクチン接種は、アレルギー反応が強く出る可能性があるからです。人生に一度きりの接種、できれば肺炎で入院をした後に、あるいは繰り返している方におすすめしたいと思います。外来を受診して診察を受け、接種希望の旨をお伝え下さい。予約をして、後日接種を行いたいと思います。宜しくお願いいたします。